グノーシア 感想

公式サイトはこちら

PSvitaで出ている時に知ってはいたのですが、買うタイミングを逃していたらSwitch移植されて、Steam移植されて。
vitaに対してクソデカ感情を抱いているので、移植された時はしばらく複雑な思いを抱いていました。グノーシアは悪くない、vitaも悪くない、俺が悪いんだ……。
それはそれとして名作だとは聞いていたので、いい加減面倒くさいオタクくんな自分とも区切りをつけ、プレイするに至った次第であります。

グノーシアは嘘をつく。
人間のふりをして近づき、だまし、人間達を消し去っていく――

一人用の人狼ADVです。チュートリアルが非常に丁寧で、人狼をプレイしたことのない人でも安心。また、特殊役職は少しずつ増えていくことや、複雑すぎる役職は出てこないという点からも、人狼ゲームとして見ると初心者向きでプレイしやすいです。

医療用ポッドから目覚めた主人公は、セツと名乗る軍人さんから、宇宙船にいること、また船に「グノーシア」という、人に擬態して、人をだまして、そして人を「消し去って」しまう存在が、宇宙船の中に紛れ込んでしまっている、という状況であることを説明されます。

だから議論してグノーシアと思わしき人物をコールドスリープ(人狼で言うところの処刑)し、平穏を掴みとる必要があるのですが、物語はそれだけではなく、どうやら主人公とセツの2人は、ループの中にいるとのこと。議論に決着がついても議論開始前に巻き戻り、グノーシア騒動は終わることが終わることがありません。加えて2人は同じループの中にはいないため、時として互いがグノーシアになり、敵対関係になったりします。

どうして2人はループの中にいるのか。グノーシア騒動はなぜ起きたのか、そもそもグノーシアとは一体なんなのか。

主人公はセツと共に、宇宙の孤独な旅路へそれぞれ旅立つのでした。

ところでこのグノーシアにはという、後天的手術で性別を無くした性別が出てきて、このセツさんも性別が汎だったりします。おそらく生まれ的には女性。他の性別:汎である登場キャラクターは、男性でまだ手術はしていないけれど性別:汎、というキャラクターも出てきます。
はパンセクシャル / バイセクシャルではなく、Xジェンダー、あるいはアセクシャルやノンセクシャルあたりで考えるのが良いと思います。開幕思うよりも万能な概念ではありません。
ただ、私はセックスとジェンダーをいっしょくたにされるのがま~~~じで嫌羊なので、そこはちゃんと別ですよ、って言ってもらえて本当良かったです。

以下、ネタバレあり感想や考察。

●グノーシア(グノース)についての考察

「グノース」はまあ、グノーシス主義が元ネタだと思います。マークからしても。グノーシス主義とは、悪しき神がつくりだしたこの世界から逃れるために、自己の本質と真の神についての認識に到達することを求める思想です。
グノースの本質を「認識」したり、「知識」を得た人が、グノーシアにあたるのではないでしょうか。グノーシアになった人は、抑圧されていた自分を開放したり、動物的本能を満たすことがあると本編でも言われています。

わかりやすい例がレムナンやラキオ、ステラだと思います。
レムナンは、抑圧されていた自己を出せるようになっている。レムナンは本質的には、攻撃的というか、執着的な性格をしています。グノーシアのレムナンは、それがより被害妄想というか、閉じた世界のまま発揮されている。
ラキオは「本当は生まれ故郷から逃げ出したかった」。めちゃくちゃ雑な言い方をすると、本音を言っています。
ステラは、理性で隠していた人間になりたい自分を、人間しか味わえない悦びを求めるという欲求を抑えなくなる。

で、逆にしげみちや沙明や夕里子などは、グノーシア時の変貌があまりないキャラクターです。普段からあまりそういった抑圧はしていないから、解放するも何もないから変わりようがない。グノースの徒になったよ~くらいの変化。

特殊な例としてSQちゃん。ある意味での二重人格をああいう形で再現したのは思わず舌を巻きました。あれは見事。パケ絵に使われているのは、SQとマナンという意味なのでしょうね。物語の元凶。
もしかしたら電脳化技術を確立させたのがマナンなのかもしれないな。SQの言葉チョイスを考えると、マナンは軍事関係者だった過去もありそうだと思うんですよね、軍事研究者あたりの。生まれて間もないSQと、長年生きた(生きている)老獪なマナン。そりゃ、動物的本能(=グノーシア化)で考えたら、マナンになるよなあって。

電脳化された人間がグノースであることは作中で、巫女であった夕里子によって断言されています。
グノース単体では更なる知識が得られないのでグノーシアを生産。電脳化自体は一般的なことであることがわかりますが、その結果がグノーシアになることである、というのは一般的ではなさそう。(あと金額も)
対して、銀の鍵も知識を得たい存在で、かつこちらも単体では知識の習得が無理なので持ち主に寄生する。ニアリーイコール的存在。グノースと銀の鍵が敵対していたら面白いなあと、何か書いていて思いました。

作中で電脳化が判明しているジナ母ですが、ジナの発言や態度を見るに、生前とは多少異なっている……というか、映画上映のように、「電脳化する前の、その人」をトレースし続けることしかできないようです。
電脳化を行うには教会が必要。星の家の人たちは受付で、星船の巫女が実際にグノーシア化させる担当者。ラキオの出身国を考えるとある程度国家(というか宇宙連合)が絡んでいるだろうし、電脳化に伴う金銭的利益が、そういった国や組織の主な収入源になっていると思います。グノーシアになった人間はグノースにはなれないのでは!? 今気がついた。殉教者とは作中でも言われているけれど、グノースから見ても手駒前提なんだな。

国家や連合の大人の事情や金銭的問題に加えて、「それでも生物(人間以外もいるので、あえてこの言い方をします)には、心のよりどころが必要」ということもあると思います。終末思想、終末思想に伴う宗教の繁栄。

●セツ

物語のキャラクター役割としての、俺らのヒロイン。バディともいうべきか。
どんな性別であれどんなプレイスタイルであれ誰が推しキャラであれ、全プレイヤーに、セツと敵対すると「ちょっとこの周、辛いなあ」と思わせるような絶妙なキャラなんですよね。医務室の出現率が高いのは、「俺」がそこにいるからなんだろうな…………最初に出会ったセツが、最後のセツになるって良いよね、イイ……

最近知ったのですが、グノーシス主義にはセツ派というものがあるらしいですね。グノーシス主義の主流の地位を確立した宗派の一つらしいです。名前からして物語の核なんだな……

通常EDを迎えてから真EDまでの「セツに会いたいなあ」と、深夜2時に思わず漏らしてしまうような、そんな過程が見事。愛しいね。一緒の世界線を生きていけはしないかもしれないけれど、文通とかしたい……
「私」の1ループ目の最初の説明、セツはどんな気持ちでしていたのだろう。「私のことを知らない貴方に会う」って、すっごく怖くないですか? あのループは心細かった、私はラキオがいてくれたけど。ラキオがいてくれたから乗り越えられた。そんなループを、お前は1人で乗り切った、あるいは乗り切るつもりでいた……セツ…………好きだ……

ところで、セツが沙明を“やってしまった”周が、特記事項を埋めた周回以外にありませんでした。という話をグノーシアをプレイした友人に話したら驚かれました。珍しかったのかな。
Steam版も買ってやろうかな、と考えているので(実績解禁したいなあ、なんて思いまして)、その時はどうなるかな。

●ジナ

シナリオライターさんのヒロイン。
食いしん坊キャラなのがかわいい。母親のこともあり、どことなく「ここにいない、何処かの誰かを追っている」という、目を離したら消えてしまいそうなジナは、実際に外壁イベントがそんな感じなのですが、食べ物関係の時は「あ、そこにジナいるな」って思えて安心します。いやまじで沢山食べてくれ、食べ放題行こう。〆にラーメン行こう。
ED後でSQと一緒に暮らしているのも安心しました。SQちゃんだったら絶対、ジナをどこかへやったりとかしなさそうじゃん。

太らせるのが好きなのも、食いしん坊な彼女に合っていてかわいい。もしかしたら母親共々よく食べる家系なのかもしれないですね。食が彼女にとって、家族を繋ぐもので、あたたかい想い出に溢れているのかも。

●SQ

少し芝居がかった口調をするのは、マナンの模倣をして、マナンではないSQという、「自分」というのが何者なのかを探しているのでしょうね。探偵になったのも「人間模様が良く知れる職業だから」というのがあるかも。
SQは、眠っている方のククルシカに何となく直観づいて地下に行かないんだろうな。レムナンとはまあ……互いに関わらない方が良い、SQもマナンが怖いので。

作中でのSQにとって、生まれた時に一人ぼっちだったことは、結構大きなトラウマだと思うんですよね。真EDでは少なくともジナ、それからもしかしたらラキオ/ステラに見守られて生まれてきているので、あの世界線のSQは何も憂うことなく生きていけるのではないかな。

●ステラ

好きな色を緑にしていたためでしょうが、めちゃくちゃ協力を持ち掛けて来てくれました。俺のこと好き?
あとチュートリアル後の初敗北グノ顔を見たのがステラでした。ステラのグノ顔は非常にインパクトがあるのですが、それはそれとして、フフ……興奮……しちゃいましてね…………となりました。

人間に、人間がすなる恋というものに、憧れている機械娘。俺、こういう設定に弱いんだ……
グノーシアにならない時のステラが作中通して一番人間みの強いキャラクターまであるのが面白いです。ジョナス凍結イベントを見るに、LeVi本体も人間に憧れているところはあるのかな。お前の王子様になりてえ……

●コメット

コメットは割と、自分を含めて客観的に見ることができるキャラクターという印象を受けました。というか、ED後のシピとの関係や粘菌と共生関係である(あった)ことをみるに、人間の器に重要性が見いだせないんじゃないかな、と感じたり。

あとはやはり、粘菌イベントの印象が強いですね。沙明恋愛イベントとしての印象なのですが。粘菌自体は結構攻撃的な感じなのではないかと思います。
普段はあくまで宿主のコメットの意志を優先していて、グノーシアの時は粘菌としての本能を優先しているのかもしれない。粘菌がヴェールみたいにぶわ~~~ってなっているやつ、好きなんだ。綺麗だ……

粘菌で思い出したのですが、ED後に売っているじゃないですか。個人的にはコメットにとって「初めての友達」くらいに考えていたのですが、もっとドライで、クマノミとイソギンチャクみたいな共生関係くらいの仲なのかも。考えてみればその細菌のせいで実質的に生まれ故郷に閉じ込められているわけだし。
生まれ故郷に閉じ込める粘菌と、密航を手伝ってくれた猫。まあ後者を取るわな。全部売ったのかな

●ククルシカ

真EDを見ると、ククルシカが初対面の時に花冠くれた理由が「再会できたことへの喜び」だということが分かるのが良いよね。ループ構造だからこその演出。アーニャもククルシカだったんだろうな、と最初は思っていたのですが、最近になって銀河鉄道999みたいな感じで、若くして死んだアーニャの遺体をアレコレして、剥製みたいな感じで人形化したものがククルシカだったりしたら、より絶望的だなって思いました。

留守番時にレムナンをアレしてしまったり、銀の鍵のための情報収集のためにどこにでも現れたり、「憐れみ」や「軽蔑」という描写があったりと、「あーやっぱりマナンなんだな」と、道中での何気ない描写が、EDを見れば全部わかるのが、糸がするするする~とほどけていくようで気持ちが良い。

人狼ゲームという議論が必要なゲームが元になっているゲームで、発声できないのに強いキャラクターというのが面白かったです。敵対する時はたまったものではないのですが。
発生できないから鍵の起動はできないけれど、鍵の情報埋めているのを見るあたり、人形ではない永遠の美を諦めていないと思うんですよね。グノーシアの時はそれが強く出ているのかも。グノーシア時(あと特記事項の留守番時)以外は人格がごりごりに削れたり、長旅の中で少し丸くなったり、そんな感じかな。

●オトメ

ステラが人間でないと気が付いていたのとかククルシカと詳細な会話が出来ていたっぽいのは、エコーロケーションですかね。彼女のイベントは音に拘られているのが多くて、人間に憧れてはいるんだけれど、イルカである彼女自身や、人間とイルカを繋ぐ架け橋になるだとか。そういった、今の彼女自身を否定しない憧れの在り方が好きです。
オトメは何歳まで生きられるのだろう……母って言われるくらいだし、長生きできたかな。長生きできているよね!
実は釣りイベントを回収できていないこともあり(映画みた)、比較的印象薄目なキャラクターであったりもします。いややっぱりSteam版も買っちゃおうかなあ。

●夕里子

まじで諸刃の剣の擬人化のようなステをした女で、火力高くてヘイトも集めやすいキャラなので、強いけれど割と生存させるのが難しかったです。夕里子をセツと協力してコールドスリープさせるのは、セツと「頑張ろう」選び続けました、頑張るセツが可愛かったので……クリアしてから「頑張るな」の方が良いっていうやつを見ましたが、案外そこまででもない。頑張ろう連打でもなんとかなります。

グノース教団に対して思うところがありそうだし、彼女がグノーシアの周回は、少し皮肉というか、切ないというか、そんな心境になりました。
星船から逃げ出してきた夕里子はどこにも行けないだろうけれど、それはどこにでも行けることでもあるので、どこかのびのびと生きることが出来る場所を見つけて欲しいなあ、と思います。

でもそんな彼女が、最後「不明」だったの、正直めちゃくちゃ興奮しました。それでこそ夕里子だ……(?)
物語を俯瞰視点から見ていたんだけれど、みんなが好きで、少し頑張って物語の外から手を差し伸べて。そして物語の外へ帰って行った。そんな感じが好きなのかも。あくまでも気まぐれとかではなくて、多少なりともこの余興(物語)を気に入ってくれていたのではないかと思います。

●ラキオ

なんだかんだでわかりやすい。優しい子で、多分グリーゼの教育に疑問を持っていたのだけれども、でも自分自身は中級〜上流階級に所属しているから反乱を起こすのもおかしいし(周りに同志もいないだろうし)、と抑圧されていたのだろうな。グノーシア時にその不満を感じる。
汎なのも、グノースの教育で性別に対する疑問があったのではないかなあ、と。というより性差の方かな。なんとなく、セツは入隊に伴う強制汎化だと思うのですが、ラキオは間違いなく自由意志じゃないですか。私はパンなのですが、「どうしてジェンダーの方の性別に拘って性差を自ら作るんだろう」って思うことがあるんですね。そんな感じ。セックスの方の性差は必然のものだと思います。
ラキオもそんな感じに考えていて、汎で手術を受ける予定でもあるけれど、故郷では勉強でそんな余裕なかったから後回しにしている、みたいな印象。

ちょっとお口が悪かったり、釣られる時にめちゃくちゃ早口になるのは、口頭でのやり取りに慣れていないからでしょうね。レムナンも、もしかしたらマナンが同じパターンの時があって多少慣れていた可能性があるのかも。
ED後ではそういう抑圧部分をうまい具合に互いに補える相棒を見つけられたという印象。いいバディだと思う。ラキオはレムナンの過去を聞いて、鼻で笑いつつも気にかけてくれそうなので、過干渉すぎなくてレムナンにも丁度いいのではないかな。

●ジョナス

恐らく作中で唯一、初対面時からクリアまでに好感度が下がるキャラクターなのでは、と思いました。そこがジョナスの魅力ではあるのですが。なんというかな、嫌いというわけではないですし好きなのですが、こ、こいつぅ……! という感情が常にある。ボブネミミッミ1期10話?

このジョナス」という言い回しをしたり、自分が人間の敵だと(=人類の英雄ではなくなる)自分はなんなのだとなると呆然する描写があるし、自分の過去がないと廃人ではない状態を保てないんだろうな。なんだろう、統合失調症も少しあると思うんだよな。少なくとも半身麻痺しているし……
一緒に旅をしているのが、(非常に人間みが溢れるとはいえ)人形と機械なので、そういった意味でもノスタルジアなキャラですね。まあその機械に殺されることもあるんだが……ジョナス、多分機械音痴ですよね。LABにも現れないし。
ファム・ファタールに狂わされたノスタルジア……もう二度と会えない運命の女……ククルシカの項目で、亡くなったアーニャを使用してのではないかと言ったのもここら辺に理由します。再会した運命の女が中身が全くの別人で、だからこそ身体が本人だとは永遠に気がつけない……みたいなの、人の心がなくない!? ないと思う。ないと思うから、物語的にはありそうな気がする……(?)

あと、俺に比翼連理言ってくるの何???? 比翼連理とか忍たまの鉢屋三郎が不破雷蔵が言っているのくらいしか見たことなかった、公式です。

●しげみち

初手、悩んだらラキオかしげみちだよね。ごめんね……

やっぱり映画館のシーンで好きになりましたね。「2人をコールドスリープさせるのを本人たちに伝える」という辛い役割を引き受けるし(自分から言いだしていそう)、それなのに2人が映画を観終えるまで待ってくれるところが好き。そりゃ真エンドの入りで、主人公もあのエピソード出す。

しげみちは「人間の肉体を失った前向きな人間」なのですが(対抗がマナン)、そういった経緯もあって、正体に気が付いていないとはいえステラに惚れたりしたのかな。コメットと並んで、人間とか猫とかイルカとか機械とか、そういう種族を重要視していないキャラクターなのかもしれない。

●シピ

クロネコヤマトの宅急便やん!(やん!!)

PC/NPC問わず積極的に「協力しよう」を持ちかけていた思い出と、それはそれとして一線を引き、誰も信用していなさそうな印象を受けます。猫に関してどうのこうの言われた過去があるんじゃないかなあ。
そういう意味で、そもそも粘菌と共生関係にある(あった)コメットと旅に出るのは、納得でした。シピグノーシア時の特殊台詞は、一線を主人公が超えてきた、という感じなのかも。自分から一線を越えることはなさそう。

でもその一線も、結構内側ギリギリなのではないかと思います。割と、絆されれば溶けていきそうな一線のような気もする。AC主義者のチュートリアルで「グノーシアと話し合おう」と提案する彼ですが、コメットの密航を手伝ったりと、事なかれ主義ではありません。ただ優しいんだよな。D.Q.O.で沢山絆されてくれねえかなあ!?(!?)
寒いところに出没しなかったり、睡眠に関する台詞が多いのは猫だな~って思いました。

●レムナン

他人の加虐的嗜好を引き出す才能がある、かわいそう。なんたって、コメットの特記事項かつ沙明の恋愛イベントである粘菌イベントで、下半身が溶けた1枚絵が用意されているという徹底ぶりです。いやまじでかわいそう。

ただ、かわいそうなだけのキャラではなくて、作中の男性陣の中では寧ろトップレベルで攻撃的なキャラクターです。執着的ともいうべきか。彼の根本に根付いているのが怒りの感情で、それをラキオがうまいこと手綱握るから活きる狂犬ですわよ。大暴れしてくれ。
ラキオのやさしさがわかって沙明のやさしさがわからなかったのは、まあレムナンが男だったからというのが大きいと思います。

●沙明

土下座が似合う男に惚れるとは思わんかった。水質管理室に頻繁に脚を運ぶお前がすきだ……いや、生き延びるために土下座をする男が、恋愛イベントでコールドスリープから目覚めないことを選ぶの、ずるくない!? ずるい。

すごい寂しがり屋。でもボノボのこともあって、沙明も最後の一歩を踏み込むということができなさそう。シピと違うのは、シピは最後の一歩を踏み込む(踏み込ませる)気がある意味でなくて、沙明は一応あるということでしょうか。本命童貞感がするのはここらへんが理由だろうな。
セクハラはしますが沙明のそれって(というか作中登場人物全員を通して)、セツがイケるというものを除いて、ルッキズムに基づいたものではないんですよね。かつ、攻撃性がない、うざさはあるのですが。良い塩梅だったなあと。と同時に、特に性的なことが苦手そうなセツが沙明をやっちゃうのも納得。

●主人公

てっきりゲームシステムから排除していたかと思っていた初日犠牲者の概念を、こう持ってくるかー! となりました。やられた(?)

不思議なんですよね。多分卵が先か鶏が先かにはなるのですが、「私」は全員「私」で、「私」はセツを助けたかったからああいう行動を取ったのだし、セツも「私」を助けたかったからああいう行動を取ったんですよ。
でもそれはあのグノーシア騒動のループの中で培われた絆で、そしてそれぞれ別のループ(宇宙)に行ってて、それがたまたま螺旋状に重なる時があるだけだよ、って感じで、もう会えそうにはなくて……でもバディなんですよねえ……

真EDでセツに会うことができたのは、ゲームシステム的な問題省いて物語的な面で考えると、ラキオが手伝ってくれたのかなあ、なんて思っています。
物語を通して、PCとセツが交流しているのに、真EDの一連の流れはなんというか、PCじゃなくてPLがセツと交流している気分。だからノーマルEDも真EDも、それぞれの味がして、それぞれで好きです。
めちゃくちゃ余談ですが、グノーシア(ゲーム全体の方)が好きになった人は「All You Need Is Kill」を呼んで欲しいな……原作の小説と映画版で結構設定が異なるのですが、私はどちらも好きです……漫画もありますので是非……

良い作品だった……この作品全体を通してなのですが、井伏鱒二が訳した勧酒を思い出しました。この盃を受けてくれ、どうぞなみなみ注がしておくれ、花に嵐の例えもあるぞ、「さよなら」だけが人生だ。

それでは皆様、良い旅を!

ゲーム感想一覧に戻るにはこちら

グノーシア 感想