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バイク旅行中の房石陽明は、見慣れぬ田舎の土地で道に迷ってしまいます。バイクもやられるわ携帯の電波も届かないわの川に突っ込むわのさんざんな目に遭っている彼の目の前に現れたのは、芹沢千枝実という女の子。彼女の助けで藤良村にある休水という集落で休めることになりましたが、そこは「おおかみ」信仰の息づく因習村なのでした……
殺人儀式「黄泉忌みの宴」に巻き込まれ、謎の生物によって殺された彼は、しかし直後にバイクで道に迷っているところに逆行し……生きている状態でまた休水の土地へ足を踏み入れることになります。
数多のループの果てに、彼は惨劇を回避し、この事件を解決できるのでしょうか。
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人狼ゲームをうまい具合に物語に落とし込んだノベルゲームです。しっかり人狼ゲームのルールに則っている、というわけではない箇所もあるのですが、「人狼ゲームがリアルにあれば、まあこうなるよね」とむしろ納得します。
ただ、ちょっと後半に行くにつれて「なん……なんか、思ってたんと少しちゃうな……」ってなりました。
というのも、いろいろあるのですが、代表としては最後の部分だけ納得がいかない。なんというか、メアリー・スーキャラがいるんですよね。そいつがいたから何とかなったぜ! ハッピーエンド! なのが消化不良でした。同ライターの他ゲームにも出ているようなので、明確にお気に入りキャラなのだと思います。
ただ、いろいろ見ていたら、批判集まり過ぎてライターさんが反省するレベルだったっぽい? ので、まあ自分がこれ以上言う必要はないでしょう……
人を選ぶノリも結構あり、個人的にはキツい箇所もあったのですが、それでも物語全体としてかなり面白かったです。
物語としての吸引力が凄く、気が付いたら夢中で読んでいる類の作品です。ただ、人狼ゲーム要素は期待しない方が良いかも。「人狼ゲームがリアルであったら」を考えるのが好きな人におすすめです。あと、後期クイーン的問題がだめなひとはだめだと思います。
■以下、ネタバレ有り感想。
●房石陽明
本名を偽っているのがわかった結婚詐欺シーンは、ドン引きする女性陣の様子も含めて最高でした。最高だったんだけどね……そのあとのめー子で割とマジで冷めてしまった。
後期クイーン的問題の第二問題の方については、自分は否定的ではないので(めちゃ連続で体験したら流石に否定的になるかも。1作に限った話をする時、第一問題については否定的ですが、第二問題についてはその回答もありだろうと思っています)、陽明が最後に出した解決策は割と好き。ループの中で、彼なりに宴の参加者たちに愛着が湧いたんだと思います。本名不明の作家さんとして、主人公「房石陽明」が関わる駒たちに対しての愛着というのかな。「信じてください」はその人たちに対して、物語を解決したい(=解決したその先が知りたい)主人公「房石陽明」として誠実に出た言葉なのではないかと思います。
狼じじいの対しても、そういう意味での愛着はあるだろうけれど、主人公「房石陽明」としてこいつ~~~と思うところはあるにはあるんだろうなと思わせるのが少し安心します。
「分からないことを知りたい」という飽くなき知的好奇心と、トライアンドエラーを苦にしない性格がループに合っていたんだなあ、と思います。まどかちゃんいないほむらちゃんなのに折れる気配がない、なんで? 廻天まだ見ていないですゴメン。
あと、倫理のオンオフできるあたりも、「房石陽明」を本名と切り離して考えられるからなのかなと思いました。時々見誤るっぽいけど。思い返してみれば最初から「こいつら!! ゲーム攻略に対して誠実であれ!!!!」みたいな感じでキレていたの、笑う。
●芹沢千枝実
あまり好きになれないヒロインだったのですが、まああの主人公ならお前しかヒロインおらんな……感もある。いやまあ千枝実の反応が正しい、房石陽明のSAN値が高すぎる。まどかちゃんいないほむらちゃんなのに折れる気配のないあいつ、本当何?
黄泉のエンディングが絶頂でしたね。宴の参加者たちを駒扱いしているのは陽明も千枝実も変わらないと思うのですが、なんていうんだろうな、宴や駒に対して誠実でないと言えばいいのか? そういうところがあまり好きになれなかったなあと思います。なんだろうなー。陽明や李花子は彼(女)らなりに宴の参加者たちを同一視して愛しているんですよね。千枝実はループの中での宴の参加者と、抜け出した後の参加者とを分けて見ている感じがする。同一キャラの駒とプレイヤーを一致させていないというか。
●回末李花子
ぽんこつかわいい。ゆめのつちぐもとも回末家にとらわれていた彼女が「李花子」個人生きていけるのだろうか、という心配がありますが、能里がおるから大丈夫やろと思います。クリアしたプレイヤーは彼に対する信頼がすごくなることでしょう。
●巻島春
狂人の出現方法がとても面白いと思った、ゲームと物語がうまくかみ合わさった要素の一つだと思います。
思春期の女の子って感じの態度だったので、そりゃ突然やってきてお姉ちゃんと距離が近いチャラい男はあまり印象良くないわなと思っていたら、割とそうでもなかった。マジ!?
暗黒の春ちゃんと房石陽明の関係が好きです。「悪人」になって初めておじいちゃんの死に涙を流すことができる春ちゃん、良いよね……
暗黒の疑似恋人陣営をしているところも好きです。レイジングループという盤上において、あの嘘は非常に効果的に働いているのが好きです。おそろいのペンライトと、それを捨てることができなかった春ちゃんというところから発覚してしまうのですが、その切ない甘さが事態や人狼の仄暗さととマッチして…………
●巻島寛造
(過去の宴を考えたらあの態度も)そらそうよ。孫娘に対して正面からぶつかるべきなのだけれど、お互いにそれが難しすぎた。取り巻く環境が悪すぎる。
基本的に春ちゃんを優先して動いているのに、宴に対しては誠実で、だからこそ暗黒で悪意にはまってしまったんだろうなとか、最後は筋を通して潔かったんだろうなとか、真相ルートでも春ちゃんを括ったんだろうなとか、とかとか。
●山脇多恵
人狼において流されるのは良くないってはっきりわかる。
陽明参加の宴の際に「後で説明したげるから」とちゃんと言ってくれるのは悪い人ではないんだなと思いました。なんだろう、よそものは嫌いだけれど、それでも理不尽な宴に巻き込まれるよそものに対する同情や説明義務が自分にはある(全てを知っているわけではない)という意識がちゃんとある、と言えば良いでしょうか。
●織部かおり
匠さんとの再婚を真剣に考えていてくれていて良かった。かおりさんの方がちょっと姐さん?
母強しの体現者でした。暗黒の、一見頼りにならなさそうだけどそんなことはなくて、でもちょっと過激すぎるので厄介なことに変わりはないという彼女が好きです。
●織部泰長
「正しくありたい人」彼が、「正しさ」について悩みつつ時々爆発するのが良かった。お前の年齢なんて耐え切れずに爆発してなんぼなんだ。頭が良く人当たりも良い(し、村内分を客観的に見ることもできる)のですが、経験が追い付いていないのはそれはそうで、ここから外の世界をたくさん知って欲しいと思いました。
最後に自分がやりたいことについて正直になれたのが良かったし、それに気が付くきっかけをくれた女性(別世界だけど)に惹かれるのがすごく良かったな…..愛情深い年上女性が好きなんだろうな。若くして父的役割をしなくちゃいけなくて母に甘える期間が少なかったから、ってのはありそう。未来に向かって歩け、若人。
●織部義次
兄と共に生き残る(死ぬけど)ルートで、兄の盾であり剣であることを当然のように実行している所ところが好きでした。それはそれとして兄が定規になってはいけない、未来に向かって歩け、若人。
●醸田近望
本作、物語中では相手が幸せであるのなら片想いであることを甘んじて受け入れる男が多すぎる、ライターの性癖?
モッチーに関しては「仲良し三人組を壊したくない」という気持ちの方が強く、それを維持するためなら自分自身の感情を犠牲にできるのですが、そもそもそれを犠牲にしなくても仲良し三人組は存在するし両立するしその犠牲で君は確実にすり減っていたよねすり減るよね気が付いているよね、って人から言われて受け止められたのが良いなと思いました。キキョーのせんぱいからのアドバイス。
●室匠
房石陽明のことを「善人じゃないし敵対したらすごく厄介な奴だけど、誠意と智慧を見せたから少なくとも今この場では信頼できる」という判断に痺れました。主人公こうしてみると、割といろんな人から本質見抜かれている感じありますね。
彼がいなくなると大人と子どもの対立が取り返しのつかないところまで行ってしまう。かおりさんとの恋路に専念できると良いですね。
●能里清之介
常に気高くあるのが本当に好き、死ぬ間際でさえ気高く、次の手に託すところが好き。ただマジでいろいろワンテンポ遅い……!!
能里家の落ちこぼれという意味合いは分かりますし、休水の人たちが陰口を叩いてるのは「田舎ってそうだよね」とは思うのですが、言っちゃあれだけどその人たちよりも頭が良いし優秀だし、田舎ってクソだなという感想に落ち着いてしまいました。そんな彼が李花子を引き取る形で地元を離れることができたのは本当に良かった。素の李花子に対して「ずっとそうしたかったんだね、これからはしていいから。できるから」「それはそれとして多少は自分の話(意見)聞いてね」みたいになるのは、本当に彼女を心から想っているんだなあと泣きそうになりました。
兄に対して笑いながら「祟られるからやめておけ」っていうのも良いですね。休水の人たちに対して、彼なりに折り合いが付けられたのかなあという気持ちにもなりました。
●狼じじい
「元々の黄泉忌みの宴の目的である私刑制度と同じ使い方をされた」がめっちゃなるほどなあと思いました。魔女狩りにもそういう側面合ったりしたのかなあ。
救われない、救っちゃいけない男。自分が救われる側だなんて思ってもいなかったんだろうな。
●めー子
後期クイーン的問題の第一問題の方について否定的なので、当然のようにめー子も最後の一幕でうーん……になりました。最初はデウスエクスマキナかなと思いましたが、同ライターの他作品に出ていることを考えるとメアリー・スーとか後期クイーン的問題の第一問題の方が適切かと思います。
幼女なのでとりあえずの投票先に選ばれないのはそれはそう、めー子が作った罠に躓いて死ぬ狼じじいの結末のどうしようもなさとかは好きです。
あとめー子むじな回の三車の対応。因習村に辟易しているのはそれはそうなんよね、内側から変えることがとてもとてもとっても疲れるし難しいからなんよね。いや、それでも幼女を巻き込んでいい理由にはならない……
エクストラの後日談でふさゆきさんが忘れられない人になっている点は好き。まじでな、メインの最後が…………
●馬宮久子
自分は民族学好きでしてね~~~作中もながら後日談できさらぎ駅に黄泉竈食にクトゥルフにで楽しかったです。
泰長とのCPも良かった。だんだん絆されてほしい。数年経って「もうおばさんよ?」とか言いながら満更でもなく、押しに負けて結婚し、おしどり夫婦として名を馳せて欲しい。これは俺の性癖。
作中での、理性の高さゆえの「無くなった銃がどこにあるか調べるべき」が狼発見の理由に繋がるの、アッアアッアッとなりつつも春ちゃん責められない俺もいてェ……面白いとかやばいとか春ちゃんの反応が辛いとかいろんな感情が入り混じって「あ~~~~~~~~!!!!!」ってなったシーンでした。
あと馬宮⇔橋本の信頼が全体的に高くて良かった、本当に普段から信頼し合っているんだろうな。恋愛感情のないバディ!
●橋本雄大
黄泉忌みの宴経験者か? 時報にならないカメラマンつよ。ひぐらし履修中です!
「奥さんと娘がいるから帰らないと」と言いつつ、馬宮を生き残らせることを優先していくのが大人の男性として偉すぎると思いました。バディとしても理想すぎる。
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個人的には「賛否両論」に落ち着く作品だったかもしれません。判断が難しいよ~~~面白くはあったのですが……
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